開催趣旨
昔は近所の原っぱや小川、里山などの身近な自然が子どもたちの遊び場でした。
近年ではそれらの遊び場の多くは失われ、自然の中で子供たちが遊ぶ機会は減少しています。
本講座は、自然豊かな環境での野外活動を通して、自然の中で遊ぶ楽しさを知り、野外活動の基本的な注意点を習得することを目的としました。
開催概要
「親子でツリーイング」は4回連続講座として開催し、森遊びのひとつである"ツリーイング"と多彩な講師陣による自然観察会を同時に楽しめる、他には類をみない自然体験講座となりました。
参加者は2つのグループに別れ、"ツリーイング"と"自然観察会"を交互に体験しました。
"ツリーイング"では、ツリーマスタークライミングアカデミー認定インストラクターの指導の下、ロープを使った木登り体験をしました。
自然観察会では、徳島大学教授をはじめとする一流の講師陣を迎え、森とそこに生息する生物についての理解を深めました。
(2013年〜)
第1回 講座開催結果
ツリーイング体験〜知らなかった徳島中央公園の自然!〜
徳島中央公園でツリーイングと自然観察会を行いました。
初めてのツリーイングに最初は少し緊張していましたが、すぐに上手に登れるようになりました。
自然観察会では、身近な原生林である徳島中央公園の森について学び、その森に生息するアカテガニの観察を行いました。
開催日時 | 2013年7月13日(土) 9:30~13:00 |
開催場所 | 徳島中央公園 |
講 師 | 鎌田 磨人(徳島大学大学院教授) 稲飯 幸代(徳島大学大学院) 原田 寿賀子(Tree Master Climbing Academy認定インストラクター) |
参加者 | 36名(スタッフ12名) |
自然観察
今回のメインフィールドである徳島中央公園の城山は、ホルトノキやクスノキが多く、ホルトノキ群落は徳島市指定の天然記念物であること、そのホルトノキが近年急速に枯れてきている事を学びました。
城山に生息しているアカテガニを捕まえて、じっくり観察しました。
性別の見分け方、森と水路を巧みに使い分けて生活している事などを学びました。
ツリーイング
ツリーイングは、ロープを使って高い木に登る技術です。
ロープと枝が直接当たらないしくみを使っているため、たくさんの人が木登りしても樹や森へのダメージを最小限にとどめることができます
○ ヘルメット、ハーネス、軍手を装着。
○ モクモク体操で準備運動!
○ ツリーイングの3つの約束を守って、 ツリーイングスタート!
第2回 講座開催結果
旭川でいきもの探し~森と川のつながりを知ろう~
第2回目は、みんなでバスにのり、上勝町へ行きました。
バスの中では城山と上勝の木の葉っぱの違い、葉っぱの運命について考えました。
上勝町では、ブナの自然林がある高丸山より流れでる川、旭川で生き物を観察し、森と川のつながりについて学びました。
開催日時 | 2013年8月22日(木) 8:30~15:15 |
開催場所 | 千年の森ふれあい館周辺 (徳島県勝浦郡上勝町) |
講 師 | 河口 洋一(徳島大学大学院准教授) |
参加者 | 25名(スタッフ14名) |
自然観察
川に入り、石を持ち上げて、石に付いている虫を獲ったり、魚を捕まえたりしました。中には泳いでいる子も!
川の石についているぬるぬるしたものを顕微鏡で観察。ぬるぬるの正体はコケでした。
コケは虫や魚のえさになり、川に落ちた葉っぱはゴミではなく水の中で分解され、小さな虫のえさや棲みかになる事を学びました。
捕まえた虫を種類毎に分け、数を記録し、みつかった指標生物の種類と数から川の汚れの程度(水質)を判定しました。
調査地点の水質階級はⅠ(きれいな水)となりました。
指標微生物 | 見つかった指標微生物に○印 数が多かった上位から2種類に●印 |
上流側班 | 下流川班 | |||||||||
水質階級Ⅰ きれいな水 |
1 | アミカ類 | ||||||||||
2 | ナミウズムシ | |||||||||||
3 | カワゲラ類 | ○ | ○ | |||||||||
4 | サワガニ | ○ | ● | |||||||||
5 | ナガレトビケラ類 | ● | ● | |||||||||
6 | ヒラタカゲロウ類 | ● | ● | |||||||||
7 | ブユ類ブユ類 | |||||||||||
8 | ヘビトンボ | |||||||||||
9 | ヤマトビケラ類 | ○ | ||||||||||
10 | ヨコエビ類ヨコエビ類 | ○ | ○ | |||||||||
水質階級Ⅱ ややきれいな水 |
11 | イシマキガイ | ||||||||||
12 | オオシマトビケラ | |||||||||||
13 | カワニナ類 | |||||||||||
14 | ゲンジボタル | |||||||||||
15 | コオニヤンマ | |||||||||||
16 | コガタシマトビケラ類 | |||||||||||
17 | ヒラタドロムシ類 | ○ | ||||||||||
18 | ヤマトシジミ | ○ | ||||||||||
水質階級Ⅲ きたない水 |
19 | イソコツブムシ類 | ||||||||||
20 | タニシ類 | |||||||||||
21 | ニホンドロソコエビ | |||||||||||
22 | シマイシビル | |||||||||||
23 | ミズカマキリ | ○ | ||||||||||
24 | ミズムシ | ○ | ||||||||||
水質階級Ⅳ とてもきたない水 |
25 | アメリカザリガニ | ○ | |||||||||
26 | エラミミズ | |||||||||||
27 | サカマキガイ | |||||||||||
28 | ユスリカ類 | |||||||||||
29 | チョウバエ類 | |||||||||||
水質階級の判定 | 水質階級 |
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○印と●印の個数 |
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●印の個数 |
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合計(Ⅰ欄+Ⅱ欄) |
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この地点の水質階級は | Ⅰです | Ⅰです |
※ 今回の調査結果は「環境省全国水生生物調査」に提出しました。
川のいきものを利用した水質判定
川の中にはさまざまな生きものが住んでいますか。
その中には、その生物の存在から水の汚れを判定できる生物(指標生物)がいます。
この特性を利用して、調査地点の水のきれいさ(水質)の程度を判定しました。
水質階級Ⅰ(きれいな水)
水が透明で川底まで見える。
川の中に入って遊びたくなるようなところ。
川底には石がたくさんあり、川岸には植物があり、日陰もある。
ヤマセミ、ヤマメ、サワガニなどが生息している。
水質階級Ⅱ(ややきれいな水)
周りに田んぼがあって、水がやや濁っている。
川の中の石を持ち上げるとたくさんの生きものをみることができる。
アユ、カワムツ、ゲンジボタルなどが生息している。
水質階級Ⅲ(きたない水)
川に排水路がつながっていたり、周りには多くの人家が見られたりするようなところ。
川底は泥っぽくなっている。
コサギ、オイカワ、タニシ、ヒルなどが生息している。
水質階級Ⅳ(とてもきたない水)
周りには工場や住宅が多い。
川岸がコンクリートや鉄でつくられており、川の水は灰色っぽく濁っている。
生きものは少ないが、アメリカザリガニ、エラミミズなどが生息している。
第3回 講座開催結果
ツリーイング体験〜この樹はどんな樹?~
徳島中央公園でツリーイングと自然観察会を行いました。
2ヶ月ぶりのツリーイングで少し不安もあったようですが、全く問題のない見事なクライミングをみせてくれました。自然観察会では、徳島中央公園の樹を観察し、それらの特性を学びました。
開催日時 | 2013年9月23日(土) 9:30~13:00 |
開催場所 | 徳島中央公園 |
講 師 | 鎌田 磨人(徳島大学大学院教授) 稲飯 幸代(徳島大学大学院) 原田 寿賀子(Tree Master Climbing Academy認定インストラクター) |
参加者 | 29名(スタッフ16名) |
ツリーイング
スタッフにハーネスを装着してもらい、モクモク体操で体をほぐし、ツリーイング開始!
前回よりずっと高い所まで登ることができました。
上の方に登ると太陽があたって暑いことや、高いところまで登って下を見ると、葉っぱがいっぱいに広がって地面が見えないことなど、樹上ならではの体験ができました。
自然観察
推定樹齢600年の"竜王さんのオオクス"やポプラ、イチョウ、クスノキ、サクラ、ツバキなどを観察しました。
葉 っぱを使ったゲームで楽しみながら、木は種類によって違った特性があることを学びました。
ツリーイングで登っているポプラの葉は、風で揺れると他の葉よりも大きな音がでることなど、木登りがもっと楽しくなる内容の観察会となりました。
第4回 講座開催結果
ツリーイング体験〜野鳥の気持ちになってみよう~
徳島中央公園でツリーイングと自然観察会を行いました。
雨の中での開催となりましたが、雨の森をたっぷり楽しみました!
開催日時 | 2013年10月5日(土) 9:30~13:00 |
開催場所 | 徳島中央公園 |
講 師 | 三宅 武(日本野鳥の会 徳島支部長) 笠井 正(日本野鳥の会) 原田 寿賀子(Tree Master Climbing Academy認定インストラクター) |
参加者 | 26名(スタッフ11名) |
ツリーイング
雨の中、カッパ着用でのツリーイングとなりましたが、みんな元気に楽しみました。
雨が葉っぱに当たる音、雨に濡れた葉っぱなどを間近に感じることができました。
自然観察
徳島中央公園をぐるっと一周し、野鳥観察を行いました。
双眼鏡やフィールドスコープで見ると身近な野鳥も新鮮!
ハトやカラスにも種類がある事を学びました。
野鳥は、ねぐらやえさ場として森を利用していることを学びました。
ハヤブサ・カワセミ・エナガなど、普段あまり見ることがない野鳥も観察できました。
種名 | 確認個体数 | |
ホルトノキ班 | アテガニ班 | |
カワウ | 1 | |
トビ | 2 | 1 |
アオサギ | 1 | 1 |
ハヤブサ | 1 | 2 |
キジバト | 3 | 3 |
カワセミ | 1 | |
コゲラ | 1 | |
キセキレイ | 1 | |
ハクセキレイ | 3 | 1 |
セグロセキレイ | 3 | 1 |
ヒヨドリ | 3 | 4 |
モズ | 1 | 1 |
エナガ | 8 | |
ヤマガラ | 4 | |
カワラヒワ | 2 | |
スズメ | 12 | 3 |
ムクドリ | 6 | |
ハシボソガラス | 20 | 8 |
ハシブトガラス | 2 | 2 |
ドバト | 12 | |
種 数 | 17種 | 15種類 |
参加者アンケートの結果
各回終了後にアンケートを配布し、計4回で累計113名の参加者にご協力いただきました。
「ツリーイングは楽しかったですか?」との問いに、91%が"とてもよくあてはまる"と答え、
"ややあてはまる"と"あてはまる"の回答を合わせると全ての回答者から"楽しかった"との回答を得ました。
「観察会は楽しかったですか?」との問いに、59%が"とてもよくあてはまる"と答え、"ややあてはまる" と"あてはまる"の回答を合わせる98%の方から"楽しかった"との回答を得ました。
「ツリーイングを体験し、森と森にすむ生きものに興味を持ちましたか?」との問いに90%の方から"とてもあてはまる"〜"あてはまる"との回答を頂き、ツリーイングが自然に対する興味の入り口となったことがわかりました。
「また、親子でツリーイングに参加したいですか?」との問いに全ての方から「また参加したい」との回答を頂き、スタッフ一同、次回への大きな糧となりました!
行事についての感想
○ とてもたのしかったです
○ またしたい、楽しかった
○ ツリーイングする前は不安と期待で一杯でしたが、上まで登れて嬉しかったです。
○ 木にとまったかんじでした(ツリーイング)
○ 観察会では知らないことを知ることができ、とても楽しかったです。